裏側のハナシ

岸田首相の米議会演説:独自色のない演説内容に米議会指導者は失望

4月11日、岸田首相は米議会上下両院合同会議において「未来に向けて~我々のグローバルパートナーシップ~」と題して演説を行いました。

 
この演説はレーガン元大統領のスピーチライターからのアドバイスを得た上、国際秩序維持への米国の貢献を讃えつつ、民主、共和両党の分断を助長しないように配慮したもの。

 
混迷を続ける国際情勢に触れながら、「より平和で安全な方向」に導いていく重要性に言及し、これまでの米国の指導力を称賛し、引き続き米国が国際問題で中心的役割を果たすように呼び掛けたものです。

 
とはいえ、これでは「共に責任を分担する」ことなどは「絵に描いた餅」に過ぎません。

 
要は、11月の大統領選挙を念頭に、米国内の分裂や分断には敢えて目を向けないようにし、日米両国が人工知能(AI )など最新技術の発展において協力する可能性に焦点を当てることにしただけの話です。

 
しかし、こうした分野では実は米国は中国との連携により関心を寄せています。

 
結果的に、さし障りのないテーマを総花的に織り込んだだけの岸田演説となりました。

 
要は、目前のウクライナ戦争やイスラエルとパレスチナの対立、はたまたインド太平洋地域で高まりを見せる緊張状態には極力触れないという官僚的な発想の演説に終始したものです。

 
事前の草稿には中国の軍事的台頭に関する厳しい表現もあったようですが、最終的には中国との関係を重視するバイデン政権からの要請もあり抑制的なものに変わりました。

 
しかも、広島出身であり、核軍縮をライフワークと掲げてきた岸田首相でありながら、核廃絶への取り組みには一言も触れずじまい。

 
その代わり、防衛予算をGDPの2%に引き上げ、反撃能力やサイバーセキュリティの向上にまい進する方針を強調。

 
言うまでもなく、前々からアメリカからは「憲法9条は日米同盟の妨げ」との意向が伝えられており、そうしたアメリカの意向に沿ったものであることは論を待ちません。

 
これでは米国の同盟国と言っても、実際は米国の「子飼い」と見なされても仕方がありません。

 
米国の議会関係者は岸田首相の演説を評価するコメントを相次いで明らかにしましたが、本心は怪しい限りです。

 
彼らにとっては、日本企業が対米直接投資を拡大することが最大の関心事であり、岸田首相がノースカロライナ州の日本企業の新工場建設現場を視察することも、地方の雇用確保になることから歓迎しているに過ぎませでした。

 
実は、演説会場には空席が目立ち、最初から欠席を決めたり、途中で退席する議員も続出したため、急遽、議会スタッフが穴埋めに動員されていたのです。

 
米議会指導者の多くは岸田首相が既にレームダックしていることを見透かしていたことが明らかでした。

 
これでは、アメリカに言われるままに、在日米軍司令部の機能強化に加え、ウクライナへの経済支援や台湾有事の際の肩代わりを押し付けられるだけで岸田政権は終わりを迎えることになりそうです。

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