裏側のハナシ

岸田首相のフランスと中南米訪問は何のため?

岸田首相は5月1日から6日の日程で、フランス、ブラジル、パラグアイを訪問しました。

 
フランスではOECD(経済協力開発機構)の閣僚理事会で演説し、偽動画など生成AIの功罪に触れながら、AIの規制に関する国際的な枠組みを立ち上げようと訴えたものです。

 
しかし、日本では有名人を偽って投資を誘い込む犯罪行為が急増しています。

 
そうした違法行為を放置したままで、AIの国際基準を創設しようと主張しても、国際社会からは「足元を固めるのが先だろう」と冷めた反応しか返ってきませんでした。

 
一方、後からフランスを訪問した中国の習近平国家主席はマクロン大統領との間で「パリ五輪の期間中はガザ地区での戦闘を停止しよう」と合意したことをアピールしています。

 
その点、「外交が十八番」と自己主張する岸田首相ですが、彼の考える創造的な外交は掛け声倒れに終わっているようです。

 
その後、経済人を200人近くも引き連れて訪問したブラジルでは、ルラ大統領が記者会見の場を活かして、日本への「安くて高品質の牛肉の売り込み」を即興で働きかけたのですが、岸田首相は事前に用意された原稿を棒読みするだけでした。

 
しかも、ルラ大統領はG20の議長国でもあり、ロシアのウクライナ侵攻に関しても、「国際法の違反だ」とロシアを非難しつつ、「欧米主導の対ロ制裁やウクライナへの武器の供与は戦争を長引かせるだけだ」と反対し、「紛争国が望めば、いつでも仲介役を果たしたい」と、独自の姿勢を打ち出したものです。

 
また、イスラエルとハマスの戦闘についても、イスラエルのやっていることは「集団虐殺だ」とテーブルを拳で叩きながら、怒りを露にしました。

 
対する岸田首相は「核兵器のない世界を一緒に目指したい」と、非核地域を既に実現している中南米のリーダーを前にして、すれ違いの発言を繰り返しただけのこと。

 
「核のない世界の実現は自分の政治信条だ」と大上段に構えながら、ブラジルに移住していた広島出身の被ばく者との面談もわずか5分で終えてしまう有様で、その本気度は疑わしい限りとの印象を残しただけでした。

 
先のワシントン訪問も「国賓待遇」ともてはやされていましたが、体よくアメリカのアジア軍事戦略のお先棒を担がされることになったに過ぎなかったと言えるでしょう。

 
多額の国費を使っての首脳外交であれば、損得勘定をしっかりと見極める努力を国会もメディア、有権者も忘れてはならないと思います。

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